パート 1

課題を克服して生産性を高める

澄んだ空を背景にさまざまなアイコンの上を飛んでいる、Qlik のロゴが描かれた緑色の熱気球

多くの人が、チームの生産性向上を阻む障壁を認識していることでしょう。非効率的なコミュニケーション、部門のサイロ化、時代遅れのプロセス、リソース不足、膨大な作業負荷によるマルチタスク、AI スキルの向上に時間がかかりすぎるなど、挙げればきりがありません。  

このガイドでは、これらすべての問題を解決することはできませんが、今日のデータ戦略が、組織全体の効率を高める鍵となる正確性・信頼性をどのように向上させているのかを解説します。さらに、リアルタイムのデータの移行、IT 部門・アナリティクス部門・事業部門の連携の強化、AI の効率化によって、生産性を向上させ、市場投入までの時間を短縮する方法についても考察します。 

さっそく始めましょう。  

リアルタイムのデータ活用の事例

古いデータは、今日のビジネスのスピードに対応できません。リアルタイムデータを活用することで、生産性が向上し、より迅速かつ的確な意思決定が可能になります。

最終的には、市場の変化を事前に察知したり、顧客のニーズを予測したりするなど、業界のあらゆる状況にすばやく適応できるようになる必要があります。

詳細を説明するために、1 つ目の「データリーダーのシナリオ」では、人気のライフスタイルブランドである Urban Outfitters 社の事例を紹介します。 

データリーダーのシナリオ #1

問題の特定

Urban Outfitters 社は、世界各地で 400 を超える店舗を運営しており、それらのシステムはサイロ化していました。そのため、同社の経営陣は各店舗の状況を明確に把握しておらず、またレポートは古くなっていることが多いため、最新のインサイトをもとに行動することが困難でした。

DO DATA DIFFERENTLY

時代に取り残されていると感じていた Urban Outfitters 社は、データ・分析戦略を統合。店舗マネージャーにリアルタイムのデータアクセスを提供して、「瞬時の決断」をサポートしています。

成果
  • 店舗パフォーマンスに関するインサイトを瞬時に獲得

  • 世界中どこでも、店舗の開設が簡単

  • 正確な在庫・配送管理

  • e コマース体験の向上と売上の増加

  • マネージャーが売場での作業に注力できるように支援



Urban Outfitters 社のロゴ
クラウドに保存されるデータが増えるほど、新しい店舗を立ち上げて、世界中のどこからでも接続することが容易になります
Paul Reigel 氏
テクノロジーディレクター | Urban Outfitters 社


実際、キャンペーンパフォーマンスダッシュボード、売上予測、在庫確認など、いずれかの作業が遅延すると、プロジェクト全体が誤った方向へ進んでしまいます。そこで、変更データキャプチャテクノロジーの出番です。データエコシステム全体を同期することで、先週の出来事ではなく、今何が起きているのかを把握できるようにします。

データパイプラインのフローを整えれば、最適なインサイトを自動的に取得できるわけではありません。最後のステップとして、適切な人物が、適切な場所でタイミングよくインサイトにアクセスできるようにする必要があります。

すべての工程を適切に実行し、最先端の AI 体験に組み込むことで、より効果的にパターンを特定し、より的確な意思決定を下しながら、プロセスをリアルタイムで最適化できるようになります。アラート、予測インサイト、パーソナライズされたレコメンデーションを、最小限の手作業で実現できることを想像してみてください。業務を効率化し、意思決定の質を高め、重要な施策に専念できるようになります。

生産性の向上と GTM の高速化を目指す場合、データ分析は一度限りの施策ではなく、データや AI の専門家だけでなく誰もが関与する、常時稼働のインテリジェントで民主的なプロセスであることを忘れないでください。

ノートパソコンを持ち、画面を見ながら微笑んでいる眼鏡をかけた男性

データリーダーになるためのヒント

蝶のように自由に舞い、蜂のように連携

自然界では、蜂の巣は高性能な蜂蜜生産システムであり、ミツバチたちが一つの目的を共有しながら、それぞれ重要かつ生産的な役割を担っています。データ基盤も、ソース数を問わず蜂の巣のように統合し、シームレスに連携できる必要があります。データを積極的に活用するには、どうすればよいでしょうか?インスピレーションを得るために、データリーダーのシナリオをもう一つ見てみましょう。 

データリーダーのシナリオ #2

問題の特定

テクノロジー企業である Intuit 社は、膨大かつ有用なデータを保持していますが、営業部門が使用するには複雑すぎます。さまざまな指標や定義を持つ多くのデータソースに依存しているため、プレゼンテーションやパフォーマンスレビューの一元管理が困難になっています。 

DO DATA DIFFERENTLY

より強力なデータ文化を必要としていた Intuit 社は、データと分析を単一かつ最先端の Web 体験に統合し、インフラストラクチャを効率化して、チームがデータを操作する方法を簡素化しました。 

成果
  • プラットフォームを横断した信頼できる唯一の情報源  

  • 従業員の責任を明示した、正確な KPI レポート  

  • データが最新であることを把握し、自信を持ってプレゼンテーションを実施  

  • 社内全体でデータ分析の利用が 10 倍に増加  

  • IT 部門と事業部門の連携を強化



白色のフォントを使用した Intuit 社のロゴ。大文字の T の上に点を付けて、人の形を表現。
データ製品アプローチを採用することで、プロジェクトチームの生産性が 26% 向上し、開発者向けチャットボットにおける LLM のハルシネーションが 44% 減少しました
Tristan Baker 氏
データ戦略およびアーキテクチャ責任者 | Intuit 社


Intuit 社は、統合 Web ポータルによってデータ分析業務を刷新しましたが、ダッシュボードなどの導入はほんの始まりに過ぎません。実際、データリーダーの多くは、何年も前からこうした取り組みを進めています。理想的な次のステップは、データ製品に関する能力をさらに高めることです。 

データ製品は、再利用・利用可能な信頼性の高いデータ資産です。業務領域に応じたビジネス課題を解決し、組織サイロの解消を支援するように設計されています。データ製品は、データの所有権・説明責任・信頼性を確保します。また、ビジネスユーザーからデータアナリスト、エンジニアに至るまで、誰もがデータにアクセスできるようにすることで、重要な分野で AI を活用し、すべての人々の作業負荷を軽減しながら、新たな成長機会を創出できます。

理想的な統合環境では、アプリの連携の欠如、認識のずれ、重複作業による時間の浪費、データ活用における遅延といった問題は発生しません。組織全体で明確かつデータ主導のコラボレーションを実現し、従業員はフルスピードで業務を遂行できます。疑問はなくなり、意思決定をスムーズに行えるようになります。 

統一性・アクセシビリティ・生産性の向上に伴い、チームがデータを理解・探索・活用できる能力(データリテラシー)は、自然に向上する可能性が高いです。  

同様に、データ管理の大部分は AI によって行われるため、従業員は AI の基礎や制約事項を理解し、AI 主導型ツールを正しく効果的に活用できるスキルを身に付けることが重要です。AI リテラシーとソフトスキルの両方に重点を置くことで、AI の導入を促進し、利便性を向上させることができます。チームは、AI の新たな活用方法を継続的に探究し、パフォーマンスを追跡して、より多くの情報に基づいた意思決定を行うようになるでしょう。  

ここで留意すべき点は、AI や機械学習は生産性を向上できますが、チームワークを促進してビジネスを成功に導くための中核を担うのは、人間であるということです。 

ノートパソコンを持ち、遠くを見つめながら微笑んでいる、ビジネススーツを着て自信に満ちた女性

データリーダーへのアドバイス

データと AI を活用して、疑問を解消

AI がデータの効果と洞察力を変革できることは、疑う余地がありません。しかし、従業員による AI 活用を促すことなくテクノロジーだけに注力するのは、回避すべきです。データ・分析ソリューションにスマートワーク文化を組み込むことで、組織全体で推進できる、AI 主導の文化を醸成できます。 

パート 1 の最後を飾る、3 つ目のデータリーダーのシナリオでは、Transbank 社がこうした文化をどのように実現したのかを解説します。 

データリーダーのシナリオ #3

問題の特定

フィンテック企業の Transbank 社は、日々の決済取引が急増していることを喜ばしく思う一方で、時代遅れのプロセスが、従業員の生産性や顧客体験に悪影響を与えています。また、プライバシーとデータ品質を確保しなければならないことも、状況をさらに困難なものにしています。 

DO DATA DIFFERENTLY

Transbank 社は、すべての主要なデータストリームを、エージェンティック euGenIA ボットなどの AI ソリューションを組み込んだ、シンプルで安全なプラットフォームに統合し、従業員が業務を最適化して重要なインサイトを提供できるようにしました。 

成果
  • チャットのような UX を備えた自律型エージェント  

  • 営業部門が、外出先でも顧客の取引やその他の行動を分析  

  • 経営陣が生成 AI を使用して、重要な顧客プロファイル・ポートフォリオ・レポートにアクセス  

  • ML モデルによって顧客離反に先回りして対処  

  • ネットプロモータースコア(NPS)やその他のセンチメント指標の向上



Transbank: creciendo juntos 社のロゴ
クラウドへの移行は進化のプロセスであり、内部プロセスをオンプレミス環境から進化させることは、発見のプロセスでもあります
Williams Fáez 氏
Transbank 社 | プラットフォーム・データ・AI 担当責任者


AI は、開発者やプログラマーといった一部の技術者に利用されてきましたが、今では多くの人が AI を利用できるようになっています。Transbank 社が実証したように、ノーコードおよびローコードのデータプラットフォームにより、チーフデータサイエンティストから若手社員に至るまで、組織内でデータを扱うすべての人々が AI を活用できるようになりました。直観的なインターフェースは、データワークフローをシンプルかつ視覚的に構築するためのアプローチを提供します。シンプルな UX により、わずか数クリックでデータの接続・クリーンアップ・必要な場所への送信を実行できます。 

OpenAI 社の ChatGPT のおかげで、今では多くの人々が生成 AI ツールに精通しています。特に職場環境では、スマートなプロンプトを作成するだけで、優れた成果を達成できます。データジャーニー全体を通じて、AI はパイプライン設計・スクリプト生成・インサイト創出といった重労働を担います。また、手作業や専門知識を必要とする複雑な作業を効率化し、高度な分析スキルの障壁を打ち破り、誰もがデータ分析を活用できるようにすることで、従業員の生産性を向上させることができます。 

この新しい効率化された分析アプローチにより、チームの作業効率が向上し、製品リリースまでの時間を短縮できます。さらに、顧客ターゲティングの精度が向上し、戦略を臨機応変に調整できるだけでなく、自動化によってデータ管理を簡素化できます。AI の専門知識がなくても、AI を活用してシンプルかつ有用なインサイトにアクセスしやすくなるという、互恵関係を生み出すことができます。 

生産性に関するこの章を終える前に、新興テクノロジーであるエージェンティック AI を紹介します。エージェンティック AI は、AI 導入の障壁を取り除くための強力なツールです。生成 AI を新たなレベルへと引き上げ、データの収集・クレンジング・分析といった、従来の自動化技術では対応できない、時間のかかる多段階プロセスを処理できます。センチメント分析などのテキストデータを読み取り平易な言葉を使用したレポートを生成することもできます。データ専門家やプログラマーによるインサイトの生成を待つ必要がなくなり、従業員の負担を軽減できます。  

また、エージェンティック AI はより自律的であるため、従業員はより戦略的かつ創造的な作業に専念できるようになります。


IDC 社のロゴ
生成 AI は非常に重要ですが、エージェンティック AI はそれ以上の価値があります。あらゆる組織が、それぞれのペースで俊敏性とイノベーションを向上させて、急成長を実現できます
Ritu Jyoti 氏
IDC 社 | グループバイスプレジデント / ゼネラルマネージャー


ノートパソコンの画面を見つめながら、議論や共同作業を行っている男性と女性

データリーダーへのアドバイス

データは活用してこそ真価を発揮

生産性を向上させるために、日々頭を悩ませる必要はありません。データは、優れた成果を次々に生み出す、生産性の高い組織の基盤となるものです。AI の活用に向けて取り組みを開始している場合でも、計画を策定している場合でも、スピード・チームワーク・AI がもたらす利点を、今こそ享受するときです。ビジネスの俊敏性と適応性を高め、未来のあらゆる状況に対応できる体制が不可欠です。 

澄んだ空を背景にさまざまなアイコンの上を飛んでいる��、Qlik のロゴが描かれた緑色の熱気球

「データリーダー」パート 1 のチェックリスト

  • AI を活用して生産性を変革することは、一度限りの施策ではありません。ビジネスや業務のニーズの変化に合わせて、常に進化し続けるタスクとして扱う必要があります。  

  • データ・AI リテラシーを、早い段階で職場文化に組み込みましょう。データと AI に対するチームの理解が深まるほど、生産性が向上します。  

  • エージェンティック AI のような高度な自動化の導入を、強くお勧めします。これにより、作業時間を大幅に短縮し、従業員が最大限のパフォーマンスを継続的に発揮できるようになります。

2 Qlik, “What Are Data Products, Anyway?,” 2024 (英語のみ)

3 Forrester, “The Total Economic Impact™ Of Qlik Cloud Analytics™,” 2024 (英語のみ)

McKinsey, “Charting a path to the data- and AI-driven enterprise of 2030,” 2024 (英語のみ)

Qlik, “61% of Global Businesses Are Scaling Back AI Investment as a Result of Trust Issues,” 2024  (英語のみ)

MIT Sloan School of Management, “How generative AI can boost highly skilled workers’ productivity,” 2023 (英語のみ)